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~大聖堂の鐘つき男~ ノートルダムの鐘 /entry06

第6回目はディズニー作品の御紹介です。

 

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ノートルダムの鐘 】

 作 者/ジーナ・インゴリア氏

 訳 者/橘高 弓枝( きったかゆみえ )

 

 

 東の空から太陽が顔を出すにつれて、パリの街はしだいに眠りから覚め、朝の活気とにぎわいをとりもどしはじめた。

 やわらかい日ざしが、夜のあいだに冷えきっていた石だたみの通りをあたため、街の中央を流れるセーヌ川の水をきらめかしている。

 セーヌ川の中に、シテ島とよばれる島がある。そのシテ島に軒をつらねる民家の切妻( きりづま )屋根や、空にむかって高くそびえるノートルダム大聖堂の尖塔( せんとう )も、朝日をあびてきらきら輝いていた。

 威厳を感じさせる外観、雄々しくのびる尖塔、外壁にほどこされた美しい彫刻、高窓をいろどる色あざやかなステンドグラス。パリの街を一望するこの巨大な大聖堂は十二世紀なかばに着工され、二百年かかってようやく完成した。

 それから一世紀を経たいまも、ノートルダム大聖堂は、訪れる人々の目を楽しませ、パリ市民の日常生活を静かに見守ってきた。

 太陽が輝きをますころになると、ノートルダム大聖堂のひんやりした鐘楼( しょうろう )にも、明るい日ざしが入りこんできた。

 鐘楼では、大聖堂の若い鐘つき男が、日ごとの務めを忠実にはたしているところだった。

 その男は巨大な鐘からたれさがる太いロープをたぐりよせると、ぐいと強く引っぱった。

 と、同時に、時を告げる鐘の音が街じゅうにひびきわたった。

 この大きな鐘の音は、街の広場に集まっている子どもたちの耳にも入った。

 ちょうど、子どもたちはあやつり人形劇を見ているところだった。

「 よくお聞き。」

 ひょうきんな顔つきをした人形使いの男が、子どもたちを見まわしながら語りかけた。

ノートルダムの高い鐘楼に鐘つき男が住んでいるのを知っているかいーーーなぞめいた鐘つき男が? 」

 人形使いは羽かざりのついた帽子をぬいで、うやうやしくおじぎをしてみせると、もったいぶった口ぶりで言葉をついだ。

「 わがはいクロパンは、ジプシーのリーダーだ。そこで、きみたちに若い鐘つき男の物語を聞かせてあげよう。」

 人形使いのクロパンは、深く息を吸った。

「 これから聞かせるのは、心ある男と恐ろしいモンスターの物語だ。よーく耳をかたむけることだね。物語は終わったときには、どちらが心ある男で、どちらがモンスターか、きみたちにもきっとわかるだろう。」

 

 

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 ジプシーのリーダーが語る大聖堂に住む鐘つき男とは、どんな人物なのでしょう。

   Sakuya ☯️

 

 

 

 

訳者紹介

橘高 弓枝( きったかゆみえ )

広島県府中市に生まれる。同志社大学文学部英文科を卒業。

訳書に、ベスト・キッド 』『 赤毛のアン 』『 若草物語 』『 マザー・テレサ 』『 コロンブス 』『 チャップリン 』『 モンゴメリ 』『 ノートルダムの鐘 』『 ヘラクレス 』『 インデペンデンス・デイなどがある。

 

 

ノートルダムの鐘

作 者/ジーナ・インゴリア氏

訳 者/橘高 弓枝氏

発 行/1996年8月

発行所/株式会社 偕成社