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~灰色の犬タテガミ~ 光の牙( 銀のたてがみ1 )/entry04

    おはようございます。

第4回目はファンタジーの御紹介です。

 

 

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    銀のたてがみ1

光の牙 

    著    者/掘    直子氏

    画    家/さべあ    のま氏

 

 

    大陸の西の果てにある国に、ミナトという少年が住んでいます。この少年はタテガミという犬を飼っていて、タテガミは太い脚、太い首、ピンと突き立った大きな耳に灰色の体毛をしている犬で、この体毛は夏草の様に深くもうもうとタテガミの体を被っています。

    ミナトとタテガミは、ミナトのおばさんの家に住んでいるのですが、タテガミの食事がなんと一日にソーセージ1本だけなのです。ミナトのおばさんはケチなので、タテガミにソーセージ1本しかくれないのです。だからミナトはこの国の王様に、闘わせるのではなく頭で勝負する賢いタテガミを見ていただいて、王様にタテガミの賢さを解ってもらえれば、ベーコンも卵も御褒美になんでも貰えると思い、お城に向かうつもりです。

    ミナトはムトリベの丘で夢物語を考えるのがいちばんの楽しみで、空を行く白い雲、青い海、見晴らしのいいムトリベの丘には誰にも邪魔されないミナトとタテガミの世界が広がっています。

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    タテガミは、ミナトの友達のイサトが飼っている赤毛のオリオンから生まれた犬で、生まれて間もない頃、イサトがカゴの中に入れてくたばりぞこないの森へ行く途中、ミナトと出合いました。その時ミナトは不思議な気持ちに包まれたのです。

    赤毛のオリオンが生んだ子は五匹で、父親は、国一番の学者としてお城へ召し抱えられていたイオキベじいさんの犬で、三年前まではこの国で一番強かった、王も認めた犬の中の犬の戦士、名前は〈 火の一号 〉です。生まれた子犬達は火の一号そっくりの、敏捷で美しい赤い毛艶の犬でしたが、一匹だけ灰色の毛で、もうとっくに開いてもいいはずの目もまだ固く閉まっていたので、イサトはくたばりぞこないの森に捨てようとしていました。くたばりぞこないの森とはいらなくなった犬を捨てる場所で、犬の墓場なのです。

    この国での犬の運命は、戦士になるか、くたばりぞこないの森へ行って死ぬかのどちらかです。戦士の犬を持つ家は王様から特別の目を懸けられ、貴族以上に贅沢な暮らしが出来ます。もちろん、名誉も。

    でも戦士になる為には、一年に一度行われる犬達の試合に勝たなくてはならず、王がお城で飼っている百匹の戦士は断然強くて手も足も出ないので、戦士になれる犬はめったに現れません。戦士の中で最高の位は〈 火 〉〈 風 〉〈 水 〉〈 土 〉の四戦士で、この四戦士にかなう犬は三年前から一匹も現れず、これらの最高の位はターラという美しい娘が飼っている犬の物です。

    ターラはある日真っ黒い大きな犬を連れてお城にやって来て、お城の四戦士に圧倒的な強さで勝ち抜いて、犬達のうち三匹の犬は倒されました。イオキベじいさんの火の一号だけが瀕死の重傷で助かったのですが、〈 火 〉〈 風 〉〈 水 〉〈 土 〉の地位からお城の四戦士を引き摺( ず )り降ろし、ターラの犬達が名誉を物にしました。イオキベじいさんは手の平を返すようにおはらい箱です。

    それからというもの、ターラは王の傍で贅沢三昧の日々、身元も素性も分からないターラに王は飛び切り目を懸けています。なので民衆の中には、どうにかしてターラの犬に取って代わる犬を作り上げたいと、見果てぬ野心が渦巻いているのです。

 

    王が強い犬を好きな理由は、昔    昔、平和で穏やかなこの国を、ナラカの山に住む魔物が我が物にしようと企んでいました。その後百年にも及ぶ間人々と魔物は戦いましたが、やがてこの国は魔物の支配下に置かれ、人々は暗澹( あんたん/ 1 )たる思いで暮らし、魔物はますます人々を苦しめました。

    そんな時、〈 火 〉〈 風 〉〈 水 〉〈 土 〉という名前の通り、火の様に猛々しく、風の様に速く空を飛び、水の様に賢くしなやかで、土の様に逞しい四頭の犬と、その犬達を自由自在に扱う勇敢な少女が現れ、ナラカの魔物に凄まじい戦いを挑んだのです。戦いは犬達の勝利に終わり、魔物はナラカの岩山の奥深く閉じ込められ、この国に再び平和が訪れました。ですがこの国の王は、またもしナラカの魔物が息を吹き返して来ないとも限らないと考え、強い犬を傍に置いたのです。この国の代々の王は、国中から選りすぐった強い犬をこの国の守り神としました。

 

 

 

    ミナトはくたばりぞこないの森に送られてしまう弱い犬を可哀想に思っていました。

    そして、灰色の子犬と出合ったのです。

 

    そんなミナトとタテガミの住む国の名は

        ナーザック

 

    さあ、ミナトとタテガミの冒険の始まりです🐺

 

 

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    心優しい少年ミナトと賢い灰色の犬タテガミは、不思議な絆で結ばれているようですね。

    ミナトとタテガミは、果たして王様から御褒美を貰うことができるのでしょうか。

        Sakuya ⚛️

 

 

1.暗澹( あんたん )/見通しがつかないで、希望がもてないさま。

 

 

 

 

 

著者紹介

掘    直子氏

群馬に生まれる。昭和女子大学卒業。

1981年、「 おれたちのはばたきを聞け 」( 童心社 ) で第14回日本児童文学者協会新人賞受賞。「 つむじ風のマリア 」( 小学館 ) で、サンケイ児童出版文化賞受賞。主な作品に「 ショーちゃんは名探偵 」( あかね書房 )「 ライオンが走った日 」( 理論社 )「 お見合いあいてはエイリアン 」『 ゆうれいママシリーズ 』( 以上偕成社 ) などかある。

 

画家紹介

さべあ    のま氏

大阪府に生まれる。跡見学園短期大学生活芸術科卒業。

まんが家として活躍しているほか、装画・装丁の仕事も手がける。

主なまんが作品に「 ネバーランド物語 」( 綺譚社 )「懐かしい贈り物」( 新潮社 ) などがある。装画・装丁に「 ふしぎなともだちジャッククローバー 」( 講談社、絵本に「 ななえがトイレでないたこと 」( TOTO出版 ) がある。

 

 

銀のたてがみ1    光の牙

著    者/掘    直子氏

画    家/さべあ    のま氏

発    行/1993年9月25日

発行所/株式会社 あかね書房

©️ N.Hori, N.Sabea, 1993

    /Printed in Jaqan